地域の歴史と食文化を大切に伝えたい。

【栗きんとん発祥の地】
 和菓子にはその土地、その環境でしか生まれなかったものが数多くありますが、その一つが「栗きんとん」です。
 この地方は山間地であり、昔は春夏秋冬自然からの恵みはとても貴重で大切にしてきました。秋には山栗が実り、各家庭ではこぞって山栗を収穫し、秋の味覚を栗ご飯にしたり、囲炉裏で焼き栗、茹で栗、搗かち栗にするなど、生活の知恵でいろいろな食べ方を考え出しました。
 やがて砂糖が各家庭で利用されるようになり、蒸した栗を切って取り出しすり鉢でつぶし、砂糖を入れでき上がったものを餅やご飯にまぶしたり、そして布巾で絞ったりして食べていたものが栗きんとんの始まりとされています。その後、明治の中ごろになり、栗きんとんが和菓子屋によって商品化されたと伝えられています。

【粋な文化が和菓子を育てる】
 大正時代になってこの地方でも栗の栽培がはじまり、大粒の栽培栗をたくさん使えるようになると、栗菓子の生産量はどんどん上がっていきました。それにつれて和菓子屋も増え、菓子屋同士が味や匠を競い、鍛練し、その結果地域ぐるみで菓子文化が発展し、「栗菓子・和菓子の里」として有名になりました。またこの地域は、文化・伝統などに秀でた所であり、数多くの文人たちを輩出しています。このような事から、この地方では古くからお茶を飲む習慣があり、お茶を愛する人が多く、それで必然的に菓子について「うるさい」人が増えたようです。口の肥えた粋人が良い菓子を育てたといえるでしょう。


【栗きんとんの里としての誇り】
 栗は鮮度が第一です。流通機構が整備された昨今では、地元の栗に加えて遠方の栗が鮮度の高いまま手に入るようになりました。たくさんある菓子屋はそれぞれの価値観で栗の品種や産地を選び、店ごとの個性を出しています。
 栗きんとんはこの地域が発祥の地であり、郷土が誇れる和菓子として全国に知られています。先人が育ててきた食文化を、私たちが守り発展させていかなければと考えています。

中津川市観光協会 原善一郎さん

中山道沿いにはひがし美濃に縁深い文人達の碑が多数くみられる。

俳句作法書
秀でた文化が確かにあったことを物語る歴史文献が数多く残されている。

文人ご用達の老舗和菓子屋が当時の味を伝え続けている。


正岡子規の句碑
桑の実や、木曽路出ずれば、穂麦かな

十辺舎一九の狂歌碑
渋皮のむけし女は見えねども栗のこはめしここの名物