栗をいただく行事
お正月のお膳には豆、栗、柿が供されます。お正月には硬い乾物で「歯固め」をするという意味があります。「歯」は「齢」通じる事から、歯を固める儀式は、健康と長寿を祈願する事につながるのです。
お節料理の金団(金飩)は、栗の色が黄色いので金といい、丸い固まりなので団といいます。黄金色の丸い小判を意味して財がたまるように祈願します。
九月九日を栗節供といい、クリの贈答をし、栗飯を炊く風習があります。一般に九月の十三夜を栗名月とよぶのもクリを供えるのに由来します。
搗栗【かちぐり】
クリの実を乾燥して、殻と渋皮とを除いたもの。芝栗(日本在来種の野生の小粒の栗)を蒸して乾燥させたあと、臼で搗いて皮と渋皮を取り除いたものです。カチカチに固くちょっとやそっとでは噛み砕けませんが、長い間口に入れていると、だんだん柔らかくなり噛み割る事が出来るようになります。水で戻せば元の栗に戻るので保存食として古来から重宝されてきました。「かち」とは「搗つく」の古語で、『徴ちょうこさいじき古歳時記』に「搗かつと勝かつと訓の同じなれば、勝といふ義にとりて、これを祝節に用ふ」とあり、「かち」は「勝ち」に通ずるから縁起物として武家の出陣や勝利の祝い、正月の祝い物などに用いられてきました。
勝栗は出陣の必須品
戦に出る前の出陣式では、「三肴」とよばれるものが供されました。三肴とは、「打ち鮑」「勝栗」「昆布」の三つ。ここから、儀式の名前を「三献の儀」といいます。出陣式の肴のとり方は、鮑3〜5切れ、栗5個、昆布5切れの順。打ち、勝ち、喜ぶ「敵を打ち果たし、勝利をあげて、喜び凱旋する」という願いを、三肴に託しました。また、戦勝後の帰陣式では三肴の順番が少しかわり、栗、鮑、昆布、つまり「この軍に勝ち栗、この敵を打ち鮑、よろこぶ」として祝ったのです。