「桃栗3年」は、本当?
栗の生態のいろは、教えます。

おいしい栗は4年目から
 「桃栗3年柿8年...」という古くからの諺のように「栗が収穫できるまで3年」という説は本当のようです。ただ、それは種からではなくて「苗」(または接ぎ木)から数えて3年です。種から結実までは約5年かかります。
 栗の一生は、
   幼木(定植から3年目)、
   若木(4〜6年目)、
   成木(7〜14年目)、
   老木(15年目以降)
という流れで、美味しい実が採れるのは若木になってからです。品種によって多少の差はありますが、若木から成木の間の手入れの善し悪しで、栗の寿命も伸びたり縮んだりします。「三つ子の魂百まで」という諺があるように、人間に似て幼い頃の育て方が行く末にまで影響するのですね。

超低樹高栽培
 栗の木は、放置すれば高さ・横幅とも7〜8mになります。背が高く枝が伸びてしまった樹は手入れや日照が隅々まで届かず、その結果樹勢が落ち、品質の低下、粒の矮小化、病害虫への抵抗力の低下を招き、収穫量が減少します。そこで塚本さんは、普段栗の剪定を担う女性やお年寄りに手入れがしやすく、太陽の光を最大限に確保できるような、革新的な剪定方法を開発しました。
 樹高2.5mに剪定された栗の木は、普段の手入れが行き届き、太陽の光がまんべんなくあたる事で果実が大きく品質も素晴らしく良くなります。木が健康になるので病気への耐性も強くなり、結果収穫量の飛躍的増加につながります。見様見まねでやってもできる技術ではないので専門家や農家からの研修依頼が絶えません。栗の里の栗名人が開発した全国に誇れる素晴らしい意匠です。



塚本實さん : 岐阜県知事認定飛騨美濃特産栗名人
 農業試験場勤務時より、50年以上にわたり栗の品種、育成、栽培法などを研究されています。現在は1haを有する栗農家の傍ら、JA中津川の果樹専門の技術顧問、また恵那地域の「栗振興会顧問」を兼任され「栗博士」として活躍される毎日です。
 塚本さんは長年の研究の末、新品種「金華」を開発されました。中国からやって来たクリタマバチで大打撃を受け生き残った品種を掛けて、昭和45年、「東濃3号」が県の品種として認められました。蜂の耐性だけでなく、収穫時には毬から離れて実だけが落果するという優れた品種です。名前の由来は岐阜県の名山「金華山」から。県下で栽培される品種の約10%を占めています。