味噌あり、
醤油あり、
ミックスあり。

ささやくように
ジュワジュワ……
鼻孔をくすぐる独特の香り。



 五平餅の「味の決め手」と言っても過言ではない、タレ。醤油あるいは味噌をベースに、その他の調味料や落花生などを加え、さらに、たっぷりの思い入れも摺り鉢に注ぎ込んで。五平餅を売る店はもちろん、家庭で五平餅を作る人からも、「やっぱりウチのタレがどこよりも美味しい!」という「秘伝のタレ自慢」をよく聞くものです。
 ところで、おじいちゃん、おばあちゃんに「お宅のタレは、醤油?それとも味噌?」とおたずねすると、「ウチはたまりだよ」と答えが返ってくることがしばしばあります。実は、この「たまり」も、この地方独特のもの。中部地方では一般的ですが、全国的にはほとんど造られていないそうです。たまりは、もともとは赤味噌の製造過程において桶の底にたまった汁でした。醤油と比べてとろみがあり、じっくりと熟成されるため、濃厚なうま味が特徴です。

手作りならでは!
こねた手跡に
じわじわとしみ込むタレ。

 おじいちゃん、おばあちゃんの話によれば、昔は各家庭での料理には、自家製の味噌やたまりが使われていたそうです。今では、そのようなお宅はまずありませんね。
 あらためて現代の五平餅に視点を戻すと、たまり醤油あるいは醤油ベースのタレが多いようです。特にだんご型の五平餅には醤油ベースという組み合わせが多く見受けられます。わらじ型は醤油あり、味噌あり、ミックスあり。ミックスには、味噌を醤油で溶いて伸ばした味噌ベースのタレと、醤油に味噌を加えた醤油ベースのタレとがあります。
 醤油ダレは型を問わずオールマイティに使われていますが、味噌ダレがだんご型に使われることはないようです。わらじ型で味噌ダレの五平餅が作られるのは主に山岡、岩村エリア。このエリアは串原や明智には負けるものの、他の地域より大きめなわらじ型の五平餅です。ボリュームたっぷりのご飯には、こってりとした味噌の方が合うのでしょうか。