たかが五平餅、されど五平餅。
それぞれの地域に、
それぞれの味がある。


アグリウーマン中津川
野井手握りごへだの会
何本でも食べてもらいたい、
自慢のだんご型五平餅。

 ウチのあたりはずっと3つのだんご型が基本のカタチ。最近はだんごの大きさが昔と比べて小さくなりましたが、食べやすいですよ。
 この地区では大変美味しいクルミが採れるので、香ばしくて旨味のあるタレになります。
 本来タレは家ごとの「秘伝」ですが、私たちの会では全員で試食し、考えながら味わい深いタレを作り出し、みんなに食べていただいています。一口目で「ちょうどいい」と思うくらいの味にすると、食べている途中にどうしても「からい」「くどい」と思うようになってしまいますので、そこを加減して。「1本食べたらもう1本食べたくなる味」――それが私たちの自慢の「ごへい」です。

使い込んだ木の串がいい。
手にぎりごへだは郷土の文化。

 私たちは普段、五平餅ではなく「ごへだ」「ごへいだ」と呼んでおり、独特の手にぎりのカタチにこだわっています。ひがし美濃地方には昔から「五合五平」という言葉がありますね。五平餅にしたらそれだけ食が進むということです。野井周辺では、収穫と脱穀・籾すりを済ませた秋の「農休み」の日に、ごへだを作って労をねぎらう習慣があります。そのほか、春夏秋冬それぞれに旬のものをタレに入れて味わってきました。手にぎりごへだは、手の跡に味噌味のタレがよくつくので味が深いですよ。五平餅の中でもいちばん素朴なカタチが手にぎりごへだ。手のぬくもりも一緒に味わってほしいですね。

とないら&福岡
くしはらヘボ愛好会
米にもタレにもこだわって作る
手作り五平、食べれや!

 番傘を使ったり新しく削ったり…… 竹の串にピンポン球サイズのだんごを5つ。お母さんが作る懐かしい五平餅は、自家製のたまりがベースのタレで、ゴマや落花生はもちろん、卵も入れていました。「エンリョせず食べれや」と声をかけてくれたのを思い出します。
 現在は、私たち農家の奥さん団体で、3つだんごの五平餅を作っています。米は自家製の「ヤマヒカリ」という品種のウルチ米。そして、「やっぱりうまいタレでないと」と、自分たちで作ったたまりを使い、やはり自分たちで作った地豆(落花生)やゴマその他を加えています。わざわざ東京の方からも注文が来るほどの美味しさですよ。

ヘボの入ったわらじ五平餅は
最高の美味しさ。

 串原では、収穫後や特別な日のほか、特に寒い日などにも五平餅を作って食べていました。わらじ型で、他の地区のものと比べてちょっと大きめ。幅の広い杉の板に米を握りつけ、平たくカタチを整えて作ります。タレは醤油に味噌を加えたもので、落花生は必ず入れます。ショウガを加えたり、春は木の芽を入れたりもしていました。ところで、串原地区では平成6年からヘボの女王蜂を育て、山に放すという活動を続けています。ヘボは、手に入れにくく非常に美味しい、貴重な山のご馳走。私たちの五平餅は、もちろん、タレにヘボを入れたもの。ヘボ入りわらじ五平は栄養たっぷりで、香ばしさもひとしおですよ。

※2003年ひがし美濃 食の文化シンポジウム(略称五平餅まつり)で行われた
パネルディスカッションでの発言を要約しました。


五平餅エリアマップ
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五平餅とよく似たお話あれこれ

その1 秋田名物「きりたんぽ」
「きりたんぽ」とは、炊き立てのご飯を摺りつぶし練り上げて、秋田杉から作った棒に巻き付けて焼いたもので、焼く時か焼いた後に味噌や醤油のタレを付けていただきます。その昔、米が多く採れる秋田の樵たちが、炭焼きや秋田杉の伐採の作業の折り、食べ残しの握り飯を長い棒に巻き付けて味噌を塗り、焼いて食べたのが始まりと伝えられています。囲炉裏でこんがりと焼いた香ばしい香りの「きりたんぽ」は、ごく一般的な秋田の家庭料理として親しまれてきました。そして、あるときは客をもてなすための欠かせないご馳走でもありました。

その2 全国各地の「焼きおにぎり」
五平餅とはちょっと傾向が違いますが、全国各地には焼いて食べるおにぎりが各種あります。たとえば、新潟のけんさ焼きおにぎり、山形のみそ焼きおにぎり、北海道のバター焼きおにぎり、熊本の朴葉包みエゴマ焼きおにぎりなどは、「タレを付けて焼く」という点に五平餅と共通する要素があるような気がします。